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2014年07月08日

その後

 もらわれてきた時は、両手にすっぽりと収まってしまう赤ちゃん猫でした。
「名前、なんてつける?」わたしが聞くと、
「そうねぇ、チャトラだからチャコってどうかしらね」と母。
「待て待て、こいつは男の子じゃないか辦公室傢俬。そいつはまずいな」父は仔猫を裏っ返しにして母に見せました。
「それじゃあ……」

 その後、一時間近く話し合って決まったのが、今の名前です。
 もっとも、正式の名前が使われたのはそれっきりで、以来、「チャチャ」としか呼ばれることはありませんでしたけれど。
 
 チャチャは大人になっても甘ったれで、やんちゃでした。疲れを知らないのか、いつまでも遊び足らず、しかも、本気でかかってくるので、家族に生傷が絶える日がありません。
 それもこれも、躾らしい躾をせず、ただただ甘やかしてきたからです。

 というのは馴染みの獣医に、
「う~ん…。この子は体が弱いから長生きはできないでしょう。せめて、おいしいものを好きなだけ食べさせ、たくさんかわいがってあげてください」そう宣告されたからです。
 心から本気にした母は、ただただ猫っかわいがりし、家族中にもそうおふれを出しました。

 猫同士ということで、教育係として頼りにしていたコタロウさえも、なぜだかチャチャには過保護で、まったくなんの役にも立ちませんでした。それどころか、たまにやってくる親戚の子どもたちがチャチャにちょっかいを出そうものなら統一派位、かばうように立ちはだかって、「フゥーッ!」と脅しをかけたりするのです。
 チャチャがわがままになってしまったのは無理ありません。
 
 獣医の診立てとはほど遠く、チャチャはどんどん大きく、ますますパワフルになっていきました。
 チャチャはそれに加えて、ひどいドジっ子でした。毎日、何かしら失敗をしでかしては、みんなをあきれさせ、ときにははらはらさせたりもしました。

 沸かしすぎたお風呂を冷ますため、ふたを半分だけ開けておいたことがありました。
 そこへ、好奇心いっぱいのチャチャが、勢い余って飛び込んでしまったことがありました。
 驚いた母は、自分も熱かったろうに、とっさにお湯の中からチャチャを拾い上げたのですが、そのあと、思いがけない不運に見舞われまたのです。
 熱かったのと驚いたのとで鳴きちらすチャチャの声を聞きつけ、部屋の奥で寝ていたはずのコタロウが、まるで弾丸のように飛んできました。

 拷問にでもあったかのように鳴いて暴れるチャチャ。それを押え込んで抱える母。わたしだって、このシーンだけを見たら、当然そう誤解すると思います。状況証拠というやつですよね。
 コタロウはキッと母を見すえたかと思うと、ダッとその足に飛び掛かり、これでもかっというぐらい、噛む、打つ、引っかく、などしたので、たまったものじゃありません。
「あいたたっ、このおばかっ! チャチャをいじめたんじゃないっていうのに、まったくもうっ!」
 いつもご飯をあげたり、トイレの掃除をしたりと世話をしているのに、なぜこんなことにと、カットバンをペタペタ貼りながらこぼしていましたっけ。

 ふつうの猫は虫が好きなものですけれど、チャチャは彼らが大っ嫌いでした郵輪旅遊
 夕食の支度が済んで、家族全員がテーブルについた時、先週から居候をしていた茶色いゴキブリが、ごぶさたっ、とばかりにひょっこり顔を出しました。
 そのときチャチャは、テーブルの下で珍しくおとなしくしていました。妹が、「あ、ゴキブリいたっ!」と叫んで、ティッシュを箱ごと振り下ろしましたが、予想通りの、見事な空振りでした。
「ほらほらっ、下に行ったよっ!」わたしも、新聞紙を丸めて構えました。するとゴキブリは、なんのつもりか知りませんが、わざわざチャチャの鼻先へと逃げていくのです。

 ようし、チャチャ、捕まえちゃえっ! そう期待したわたしがまぬけでした。
「フギャッ」と一鳴きすると、屈み込んでのぞき込むわたしたちの頭や背中を踏み台にしてテーブルに駆け登り、盛りつけた料理も食器も、何もかもみんなめちゃめちゃにしてしまいました。
 その晩は、近所のとんかつ屋で外食になりました。
 もそもそと食べながら、
「テーブルの下にいたのがチャチャじゃなくて、コタロウだったらねぇ」と、うなずきあうのでした。

 ばかな子ほどかわいいと言いますけど、それは本当ですね。
 チャチャは相変わらず騒動を繰り返すし、手加減なしの甘噛みもします。それなのに、まったく手のかからないコタロウよりもずっと、気になって仕方がない子でした。ちょうど、末の弟のようなものです。

 せんだって、何年ぶりかに実家へ帰りました。
「あれっ、チャチャは?」わたしは聞きました。いつもなら、玄関をくぐるが早いか、転がるように飛び出してきて、「熱烈歓迎」してくれるのに。
「あ……。連絡するかどうか迷ったんだけど―」母にしては歯切れのわるい物言いです。
「死んじゃったの?」
「うん、去年の末にね。直前まで、さんざっぱら遊び回っていたのに、急に静かになってさ、変だと思って見に行ったら、いつも自分が寝ているマットの上で大の字になって死んでたの」
「そうなんだ……チャチャも死んじゃったのかぁ」不思議と悲しくありませんでした香港如新集團。どうやらそれは、母も同様のようでした。

「まったく、チャチャときたらねぇ、本当に」
「チャチャらしい……よね。つくづく」
「そうだねぇ、チャチャはチャチャだったねぇ、最後まで」
 母は、手の甲をわたしに差し出し、
「ここんとこの傷、チャチャに引っかかれたやつだよ」
 わたしも自分の手を見せ、
「これなんか、思いっきり噛まれた跡。加減てものを知らないんだからさっ」

 お互いの傷を数え合いながら、ふと思いました。
(この傷、ずっと残るのかな。たぶん、残るんだろうなぁ。消えないでほしいよ、いつまでも)
 帰りがけ、ふと振り返ると、茶だんすにフォトフレームが立てかけられているのに気づきました。
 中には、元気いっぱいだった頃のチャチャの写真が。
 
 命名されて以来、ほとんど使われたことのない名前を、わたしは十年ぶりに口にしました。
「さようならだね、茶々丸っ」




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